もやしのゲームレビューブログ

『Assassin's Creed Odyssey』レビュー。快適な「ゲーム」であることを追求した秀作。

ゲームタイトル Assassin's Creed Odyssey
評価 S(おすすめ)
プレイ時間 80時間
プレイ状況 クリア済み

www.ubisoft.co.jp

ゲーム概要

Assassin's Creed Odyssey (アサシンクリード オデッセイ)』(以下、『本作』)は、古代ギリシアに生まれた傭兵アレクシオス/カサンドラが、生き別れとなった家族を救うため、コスモスの門徒と呼ばれる闇の勢力と戦う、アクションRPGだ。

本作の舞台は、紀元前430年の古代ギリシア。プレイヤーはアレクシオス(男)かカサンドラ(女)のどちらかを主人公として選び、英雄の壮大な物語が幕を開ける。古代ギリシアの社会では、神々への強い崇拝が行われており、神託官の言葉は絶対であった。ある日、デルフォイの神託官から、主人公の妹/弟を生贄にささげろという託宣が命じられる。主人公の父母は、神託官の教えに従い、幼子を手にかけようとする。しかし、主人公は幼子を守ろうと抵抗し、神託官から崖に突き落とされてしまう。主人公は運よく生還し、ワシ使いの傭兵として生きていく事となる。

傭兵として生活する中で、スパルタの将軍である父と再会する。父は、不可解な託宣を主導した、コスモスの門徒と呼ばれる組織の存在を、主人公に告げる。主人公は、再び家族と共に生活するため、コスモスの門徒と戦うことを心に決め、旅を始める。


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中央左の男性がアレクシオス、中央右の女性がカサンドラ

本作のゲームシステムは、敵を倒したりクエストを達成することによって、キャラクターのレベルを上げていく、アクションRPGである。キャラクターの移動や戦闘は、滑らかな操作性と自由に移動できるパルクールアクションにより、極めて快適である。プレイヤーが冒険するフィールドは、シリーズ恒例の広大なオープンワールドであり、見どころ満載のロケーションが用意されている。本作は、古代ギリシア世界での冒険を、常に軽快な心持ちでプレイできる、爽快で快適な「ゲーム」だ。

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どこを切り取っても美しい、古代ギリシアの世界

以下ネタバレ等詳細なゲーム内容を含むため注意

良かった点

アクションRPGアサシンクリードとしての完成形

本作は、前作『アサシンクリード オリジンズ』と同様に、アクションRPGの要素を取り入れている。各地域ごとに推奨レベルが存在し、クエストをクリアしたり敵を倒すことによって、プレイヤーは経験値を獲得することができる。ある一定以上の経験値を貯めることで、レベルが上がりアビリティポイントを獲得することができる。レベルアップや新しいアビリティの取得に加えて、敵がドロップした武器や宝箱から拾った防具などを装備することによって、キャラクターを自分好みに成長させることができる。

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アビリティ一覧。ハンター・ウォーリア・アサシンの3種のビルド構成から、好きなアビリティを取得することができる。

アサシンクリードシリーズは、初代『アサシンクリード』から前々作の『アサシンクリード シンジケート』まで、ステルスアクションを主体とした戦闘システムであった。前作の『アサシンクリード オリジンズ』では、強力なレベル制とソウルライクな戦闘要素を取り入れ、アクションRPGへの移行を試みたが、ファンの反応は賛否両論であった。旧来のファンは、高レベルの敵を一撃で暗殺できない点や、史実を舞台にしたアサシンクリードシリーズに怪物や魔術が混在する点などに、反感を持った。その一方で、アクション要素を強めたことにより、暗殺以外にも様々な戦闘方法を模索することができ、従来よりも戦闘の幅が広がった。

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前々作の『アサシンクリード シンジケート』舞台は産業革命期ロンドン

本作の戦闘システムは、前作『アサシンクリード オリジンズ』のアクション要素を、より派手で多彩にしたものである。牛頭人身のミノタウロス蛇頭人身のメドゥーサとの戦いでは、敵の行動パターンを把握し、適切なタイミングで攻撃やガードを行う必要がある。プレイヤーが発動できる各アビリティには、クールタイムが設定されているため、必殺技アビリティや回復アビリティなどは、タイミングを考えて使用する必要がある。また、本作の操作性は極めて快適で、プレイヤーは意のままに古代ギリシアの傭兵を操ることができる。

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目を見たら石化すると伝えられているメドゥーサ戦

史実とファンタジーの融合した、特殊な世界観に対する批判は残ってはいるが、本作は間違いなく、アサシンクリードシリーズで最も戦闘が楽しいゲームである。おそらく、全オープンワールドアクションRPGの中でも、トップクラスに戦闘が楽しいゲームであるだろう。

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本作のアサシンは、正面戦闘もお手の物

雄大なフィールドと膨大な探索要素

本作では、大都市アテナイや山岳森林地帯のエリス、黄金の草原アルカディアに陽光煌めくエーゲ海、大小様々な島々までを探索することができる。それぞれの地域には、個性的なサイドクエストや特有の野生動物などが存在するため、古代ギリシアの世界を遊びつくすには膨大な時間を要するだろう。願わくば、本作の大部分を占める広大な大海原も、海中神殿や漁などの遊びを導入して、探求心に富んだ作りにしてほしかった。

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シリーズおなじみの海戦は本作も健在

美麗なグラフィックとフォトモード

本作のアートデザインはどこを切り取っても美しく、風光明媚な古代ギリシアの世界を見事に描いている。美しい風景を目にした人間というものは、つい写真を撮りたくなってしまうものであるが、本作ではフォトモードという写真撮影・加工システムが実装されている。

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いつでも気軽に撮影ができる事も、本作の魅力の一つ

本作のフォトモードでは、カメラの画角はもちろん、彩度や明度、被写界深度にフォトフレームまで、ありとあらゆる構成を調整することが可能である。同一の風景でも、色彩やトーンを変えることによって、様々な風情と味わいを楽しむことができるであろう。

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同一の風景も、設定を調整すればもはや別物だ

悪かった点

稚拙なストーリー分岐

本作のセールスポイントに、プレイヤーが選んだ選択肢によってストーリが分岐するというシステムがある。プレイヤーがクエストを進める中で、複数の選択肢を持った会話が発生する。この会話文の選択によって、後々のストーリー展開が変化していくのだが、本作のシナリオ分岐システムは、少々稚拙で未熟である。

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エストの会話には、いくつかの選択肢が与えられる

ストーリー分岐型RPGとして有名な作品の一つに、『ウィッチャー3 ワイルドハント』(以下、『ウィッチャー3』)がある。ウィッチャー3も本作と同様、プレイヤーの選んだ選択肢により、シナリオの行方が変化する。しかし、ウィッチャー3のシナリオ分岐システムは、様々な選択肢が複雑に絡み合い、その世界全体に多大な変化を生み出すものである。

本作のシナリオ分岐システムは、1つのクエストで1度、2-3択の選択肢が表示され、その選んだ選択肢により、クエストの結末が変化するというものだ。ウィッチャー3のように、様々の選択結果が複雑に絡み合うこともなければ、プレイヤーの選択によって世界全体が激変することもない。むしろ、シナリオ分岐システムを取り入れたことにより、各クエストのストーリーが浅薄になってしまい、退屈な脚本になっていると感じる。このような空虚なシナリオ分岐システムを用いるよりも、リニア進行型のクエストシステムに刷新した方が、味わい深いストーリーを生み出せるのではないかと考える。

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上の選択肢へ誘導するような会話分岐は必要なのか

最も重要なストーリーをDLCで補完した点

本作には2つのDLCダウンロードコンテンツ)が存在する。これらのDLCでは、本編中に語られなかった主人公の行く末について、描写している。つまり、これらのDLCを購入しなければ、エンディング後の主人公の人生や、主人公の子供の出生などを知ることができない。

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これらのDLCをプレイすることで、前作オリジンズに登場したアサシン「アヤ」が、本作主人公の子孫であることを知ることができる

また、アサシンクリードシリーズには、現代編と呼ばれる特徴的なストーリーが存在する。現代編とは、初代『アサシンクリード』から本作まで継続して繋がっているサブストーリーで、現代世界でのアサシン教団とテンプル騎士団の確執を描いている。本作にも現代編は存在するが、本編中では一部の要素しか体験することができず、その続きはDLCに持ち越されている。全アサシンクリードシリーズで継続している現代編を、DLCを購入しなければ満足に知る事ができないというのは、どこか不完全である。

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DLCの現代編では、スーツを着た主人公と対面することができる

総評:快適な「ゲーム」であることを追求した秀作

本作は、「快適なゲームであること」を最大の目標にして制作されている。ゲームとは、映像作品でも技術を誇示する場でもなく、プレイヤーが操作することにより、視覚的・聴覚的フィードバックが発生するという、インタラクティブなエンタテインメントである。つまり、ゲームがゲームであるためには、快適な操作性というものが必須である。だが、この快適な操作性を実現するためには、様々な細かい調整と設計が必要となるため、多くのゲームではこの厄介な問題を蔑ろにしている。

しかし本作では、プレイヤーは意のままにキャラクターを操ることができる。障害物につっかえてしまったり、プレイヤーが意図しない動作を行ってしまうことはない。また、探索しがいのあるフィールドや、プレイヤーの選択によって変化するストーリーを見て取れば、「映像作品でなくゲームであること」を重視して制作されていることが分かる。徹底してゲームであることを追求した本作は、とにかく遊びやすいユーザーライクな「ゲーム」に仕上がっている。


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快適な「ゲーム」であることを追求した秀作